暴言・暴力は多くの場合改善できます。

区のケースワーカーからご紹介いただいた70歳代の男性患者様です。

区役所などに鈍器をもって支離滅裂・意味不明な内容で怒鳴りにいくことが度々あったため、以前から精神疾患が疑われていたようです。しかし、ご本人様には病識がなく医療機関を受診する意思もないため長期間無治療となっていたようです。しかし、次第に行動がエスカレートしたため訪問診療にて問題行動に対応してくれるクリニックはないかということで当院の訪問診療に依頼が来ました。初診時の様子は明らかな被害妄想・多弁・興奮を認め会話は困難で怒気を荒げている状況した。一方、家の中はごみが散乱し生活は荒廃していました。統合失調症と診断いたしましたが、当初は内服治療が開始できるような状況ではありませんでした。内服治療を安定的に行うためには、ご本人様にまず当院を信頼していただくことが必要と考えました。ご本人様がお困りであった生活をサポートするために、地域の訪問看護ステーションさんや介護事業所の方々、薬剤師さんにご協力いただきました。以前は話し相手もいなく、外出先もないことを被害的に捉えていましたが、薬剤師さんが丁寧に内服について説明してくださり、また、デイサービスに通うようになると自発的に内服加療を受け入れるようになりました。介入から数か月経ち、興奮や被害妄想は著明に改善いたしました。現在はデイサービスにも問題なく通うことができるようになり、安定的な加療が行えています。

本例のように被害妄想のある患者さんの場合には対応困難となることも少なくありません。介入の糸口を見つけるためには、まずはその方の生活全体の把握が必要不可欠です。妄想があるからといって強制的に介入すると、かえって患者さんからの信頼を損なう危険があります。患者さんとの対立はなるべく避けつつ、ご本人様が受け入れ可能な形からの治療介入には入念な準備・対策が必要であることが多いです。このため、多職種・多事業所を巻き込んだチームで対応することが速やで安定的な治療につながります。本例を通して地域の皆様との連携を通じた生活全般のサポートが重要であると再認識されられました。ご協力いただきました皆様にこの場を借りて感謝申し上げたいと思います。