内服薬が原因で問題行動が起こることもあります。

地域のケアマネージャーさんから紹介いただいた80歳代の男性の患者様です。

主訴は被害妄想や暴言・暴力があって家族が対応できないとのことでした。生活は妻と息子様の3人暮らしでキーパーソンは息子様でした。約10年前から認知機能の低下を指摘されていたものの、比較的お元気で最近まで無治療でした。ところが、最近になり認知機能の低下が一層激しくなり、同時に暴言・暴力が激しくなりました。どう対応していいのかわからない息子様はお父様(ご本人様)を自宅で縄で縛りあげるなどしてお父様からの暴力に抵抗していました。しかし、あまりの暴力に困って地域包括支援センターに息子様が相談したところ、当院を紹介され、訪問診療として介入することになりました。当初の診察時の様子は、興奮著しく、体中にご家族との間の格闘の跡がありました。息子様によくよくお話を伺うと、実はお父様に対して「認知症が少しでもよくなればと思って、近医に(一人で)相談に行き認知症の内服薬の処方を受けた。それを内服させたらますます暴力や興奮がひどくなった。」とのことでした。認知症と認知症に伴う周辺症状と診断し、興奮の原因となっている内服薬を服用を中止してもらいました。また、少量の向精神薬を投薬したところ、速やかに暴言・暴力・興奮・被害妄想は消失し、数か月後に元の穏やかなお父様に戻りました。食事も落ち着いて取れるようになり、体調も改善しました。

本例は、認知症に対する治療薬の副作用でかえって興奮・暴力行為がエスカレートしたと推測されるケースです。薬にはメリットとデメリットがあります。また、お体に合う/合わないがあります。当然、無診察での処方は禁じられていますが、一方で、実際には病状のため、病院やクリニックまで通院できない患者様がいるのも事実です。訪問診療では必ず実際にご本人様を診察いたします。やはり、患者様を十分に観察することの重要性を再認識させられるケースです。