世帯単位で診療することは時に必要

親子2人を合わせて診察してもらいたいというケースです。

患者様はアルツハイマー型認知症で長谷川式にて5点程度の80歳代のお母様と、60歳代の統合失調症慢性期の息子様で、お二人が同居されているケースです。お母様の介護度は5で、坐位は保てるもののほとんどすべての動作に介助が必要な状況でした。息子様は陰性症状が主であり、毎日無為に生活しているような状況でした。お母様の認知症の進行により、次第に生活が荒廃していったようです。家の中はゴミが溜まり、雨漏りや小動物が出現するようになりました。地域包括支援センターから、生活全般の立て直しを目的に当院の訪問診療の依頼が入りました。当初は家の中が荒れていて、立ち入るのも難しい状況での訪問でした。しかし、幸いにして息子様には拒否はなく、こちらからの話しかけに対して一定程度の理解をして下さる方でした。そこで、少しずつではありますが、息子様に対して生活環境の改善に向けて具体的で分かりやすい指導をひとつずつしていきました。また、お母様の介護に対しても一種の作業療法的に説明を続けました。その後徐々にお二人の生活環境は改善していき、数か月後には、介護保険や行政に大きく依存することもなく、食事、内服、金銭管理も含めお二人で自律した生活を達成されました。また、ゴミ問題や雨漏り、汚物が床にまき散らされているという状況も改善いたしました。

確かに患者さんひとりひとりは別人格ですが、在宅療養上の計画を立てる場合には生活共同体として捉えることも時に必要であると考えています。このケースのように、たとえ精神疾患のあるご家族様であっても適切な指導がなされれば、自分の役割を自覚していただき二人での生活の維持に大きく貢献できる場合もあります。「できないこと」に注目しすぎるのでなく、「何ができるか/できそうか」に着目することで、適切かつ効果的な社会資源の利用につなげられると考えています。本例のように上手くいく例ばかりではありませんが、患者さんに内在するストロングポイントを発見し、いかにそれを引き出すのかが訪問診療の鍵であるような気がいたします。